夏はさっぱり、冬はこたつでぬくぬくと、1年を通しておいしく食べられる柑橘系フルーツ。
その種類・品種は非常に多く、最近ではスーパーなどで珍しい品種を見かけることも多いのではないでしょうか?
そんな柑橘フルーツの中でも、代表的な品種に「甘夏」と「いよかん」があります。
どちらもおいしい柑橘フルーツですが、この2つの違いはどこにあるのでしょうか?
品種としての違いから味・栄養の違いまで、詳しくご紹介します。
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甘夏といよかんの違いはどんな部分?
甘夏といよかんは、いずれもミカン科ミカン属に分類される果物です。
同じ柑橘類で、見た目も似ていますよね。
それでは2つの違いはどこにあるかというと、そもそもの品種の起源から異なっているのです。
品種が違えば、旬の時期や栄養素、味にも違いが出てきます。
続いて、具体的にどのように違っているのかをみていきましょう。
品種としての違い
まず、「甘夏」という品種についてです。
甘夏は夏みかんを起源とする柑橘フルーツで、その夏みかんは江戸時代に山口県の青海島に漂着した南方系の柑橘種を育成・栽培したものが起源であるといわれています。
昭和10年頃に大分県の農園で、その夏みかんの中から酸味の少ない品種として発見されたものが「甘夏」としてのちに品種登録されました。
農園主が川野という名前だったことから、「川野夏橙(かわのなつだいだい)」とも呼ばれます。
一方の「いよかん」は、明治19年に現在の山口県萩市で発見された品種です。
当時は地名にちなんで「穴門蜜柑(あなどみかん)」と呼ばれていましたが、明治22年に愛媛県での栽培が始まって以降、主要な産地となった愛媛県にちなんで「いよかん」と名付けられました。
旬の時期の違い
甘夏は、1~3月にかけて収穫されます。
収穫後、倉庫などで熟成しれ酸味が抜かれ、3~5月に旬を迎えます。
いよかんは、12~3月にかけて収穫され、1~2月が特に旬となります。
いよかんの産地である愛媛県では、旬である1月に収穫し3月まで熟成させた高品質ないよかんを「弥生紅」というブランドで出荷しているようです。
栄養価の違い
続いて、甘夏といよかんの栄養価について、まずは表で比較してみましょう。
可食部100gあたり | 甘夏 | いよかん | |
エネルギー(kcal) | 40 | 46 | |
タンパク質(g) | 0.9 | 0.9 | |
脂質(g) | 0.1 | 0.1 | |
炭水化物(g) | 10.0 | 11.8 | |
カリウム(mg) | 190 | 190 | |
マグネシウム(mg) | 10 | 14 | |
ビタミンA(μg) | 145 | 291 | |
ビタミンE(mg) | 0.3 | 0.1 | |
ビタミンB1(mg) | 0.08 | 0.06 | |
ビタミンB2(mg) | 0.03 | 0.03 | |
ナイアシン(mg) | 0.4 | 0.3 | |
ビタミンB6(mg) | 0.05 | 0.07 | |
ビタミンB12(μg) | (0) | (0) | |
葉酸(μg) | 25 | 19 | |
パントテン酸(mg) | 0.29 | 0.36 | |
ビタミンC(mg) | 38 | 35 | |
食物繊維 | 水溶性食物繊維(g) | 0.4 | 0.5 |
不溶性食物繊維(g) | 0.8 | 0.6 |
※( ):推定値
ほとんどの栄養素については、2つの品種で大きな差はありません。
しかし、顕著な差があるのがビタミンAです。ビタミンAの中でも、「βクリプトキサンチン」という成分に大きな差があり、甘夏では120μgであるのに対し、いよかんでは270μgと2倍以上も含まれています。
βクリプトキサンチンとは、βカロテンなどと同じくビタミンAの一種で、みかんをはじめ、唐辛子やパプリカにも豊富に含まれており、野菜や果物の鮮やかな黄色のもととなる成分です。
体内に吸収されたあと、必要に応じてビタミンAに変換されて働きます。
ビタミンAとしての視力、皮膚・粘膜の健康維持の働きの他、私たちの身体に対する健康効果も高く様々な研究がされています。
現在分かっているβクリプトキサンチンの効果としては、肝機能障害や骨粗鬆症の抑制、動脈硬化や糖尿病の予防など生活習慣病への効果があげられます。
味わいの違い
実際に食べたときの違いとしては、甘夏は甘味とともに強めの酸味があるさっぱりとした味であるのに対し、いよかんは甘味と酸味のバランスがよく、果汁がたっぷりと出てくるのが特徴です。
また、甘夏は果肉のプチプチとした食感がはっきりとありますが、いよかんは比較的やわらかいという違いもあります。
好みによって、プチプチさっぱりの甘夏と、甘くてジューシーないよかんとを選び分けるといいですね。
その他の違うポイント
品種や栄養、味の他に、生産されている産地も大きく違います。
甘夏は熊本県・鹿児島県が主要な産地で、全体の50%以上を占めています。
それに対し、いよかんは愛媛県が全体と90%とそのほとんどを占めており、愛媛県の特産品であることがわかります。
甘夏といよかんの主な違いをおさらい
- 旬の時期:甘夏は3~5月 いよかんは1~2月
- 栄養:いよかんの方がビタミンAが豊富!
- 味:甘夏は強めの酸味がある。いよかんは果汁がたっぷり。
- 生産地:甘夏は熊本県、鹿児島県。いよかんは愛媛県。
まとめ
甘くておいしい柑橘フルーツ、甘夏といよかんの違いについてご紹介しました。
起源となった品種や時代も異なり、旬の時期、味や栄養にも違いがありました。
特に食べたときの味や食感にはそれぞれ特徴があるため、2つの品種を食べ比べたり、好みによって品種を選んでみてくださいね。